悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。


「ねえクロム。“何を作れば喜ぶか”って、私に聞くのは間違ってるわよ。私はミラ様じゃないもの。そういうのは、本人に聞かないと」
「え……?」

 屋敷の方からミラが小走りでくるのが見えた。笑顔で手を振っている。

「クロム様、お姉様、おはようございます! いい朝ですわね」
「おはよう、ミラ様。笑顔が眩しいわね」

 私はミラに手を振り返して、クロムにもう一度言う。

「夫婦なんだから――二人で話して、一緒に作ればいいのよ。あなたが“作ってあげる”んじゃなくて、“一緒に作る”の。ミラ様はそういう方が好きなはずよ」

 クロムは目を見開いて、しばらく黙ってから、小さく笑った。

「……そっか。そうする。ありがとう、姉上。おはようございます、ミラ様」

 クロムはミラに手を振りかえす。
 うん。同じ価値観、歩幅で歩けるなら、クロムとミラはいい夫婦になるわね。