悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。

 クロムは一口赤飯を多ベ、メガネを外し、ハンカチで目元を拭う。いつもはクールに決めているクロムでも、嬉し泣きはするんだ。

 いつもならここで茶化すミゲルだけど、流石に空気を読んでなにも突っ込まない。

「クロムかクロム。いつもありがとうな! 家庭を持ってもおれの仕事手伝ってくれよな」

 カイン王子が旅先で見つけてきた酒の瓶を掲げる。

「これはグレアス王国で祝い事のときに飲む秘蔵の酒らしいんだ。側近の結婚がちかいと話したらグレアスの陛下が譲ってくださった」
「グ………グレアス王国の国王陛下が、他国の臣下の俺のために!? なんて畏(おそ)れ多い………」
「そうかたくなるなって。身分関係なくお祝いしてくれてるだけだって。次に行くときはクロムも一緒に行ってくれ」

 カイン王子はカップになみなみと酒を注いで、クロムとミラにおしつける。
 隣国の国王陛下秘蔵の酒……カップ一杯いくらするんだろう。聞くのも怖い。
 心なしか、クロムはカップを持つ手が震えている。
 ミラも緊張の面持ちだ。

「お祝いしてくださるというのなら、飲まないほうが失礼にあたりますわね。飲みましょう、クロム様」
「ミラ様……。はい。そうですね」