悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。

 元日本人の私とコリンは赤飯が何なのかわかったけれど、ヨイは首を傾げるばかりだ。

 お茶を運んできてくれたメイドも、頭に? を浮かべている。

「赤飯、とはなんです? クリティア様はご存知ですか?」

「あー、コホン。えー、と、そうね。以前ミゲルには赤飯について話したことがあったわね。女神様からの天啓で聞いたお祝いの文化です。粘り気のある米を豆と一緒に炊いたものです」

 ああ、日本の料理を女神様の天啓だと言ってしまったウン年前の私を叩きたい。

 日本の料理を持ち込むために、毎回存在しない女神の天啓を受けたことにしないといけないんだもの。

 ミゲルが声を出さずにゴメーンとジェスチャーしている。あとで殴るぞミゲル。

「この世界にある豆で赤飯を再現できるかはわからないですが、やってみる価値はありますね。あとは、塩釜焼きもできたら良いかもしれないわ」

 私の中でお祝い料理と言うと、赤飯と並んで塩釜焼きがある。

「塩釜焼き?」
「ええ。塩と卵白を練り合わせて作った生地で、魚を包んで、オーブンで焼き上げるのです。塩に包んで蒸し上げられた魚はふっくら柔らかく仕上がるんです」
「まあまあ! そんな調理法があるのですね! 一度試しに作ってみてもよろしいでしょうか。いきなり本番で提供だと失敗する可能性もありますし、難しくないようなら海での軍事訓練時に役立ちそうです!」

 ああ、休暇なのに訓練で役立つなーと思っちゃってるあたり、ヨイはかなりのワーカーホリック。いや、楽しんでいるのよね、軍属。

「ヨイがそう言うなら、あたしもチャレンジしてみたいわ。あとは市場で使えそうな豆を探しましょう」
「おれもおれも! 塩釜焼き好き! 分け前ちょーだい!」

 そんなわけで、私たちジャージ隊は異世界で日本伝統のお祝い料理……赤飯と塩釜焼きを再現してみることになった。