悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。


 スープ作りにとりかかる。
 たっぷりの水に、鶏の手羽中と長ネギ、刻んだショウガ。これらを寸胴鍋でじっくり煮込む。
 
 時々アクを取る。
 ミラはお玉片手にアク取りを手伝ってくれている。

「クリティアお姉さま。このお湯に浮いてきたものを取るのはなぜです?」
「肉の臭みやえぐみがアクとしてでくるから、これを丁寧に取るとスッキリ美味しいスープになるの」
「知りませんでしたわ。わたくしが普段屋敷で飲んでいるスープも、いつもとても美味しいのです。料理人がこうして毎食手間ひまかけて調理してくれているのですね」

「そうですね。帰ってから、いつもありがとうって伝えたら喜ぶと思います」
「そうします」

 ミラはジャージの袖をまくりあげてヤル気をみなぎらせる。

「煮込むのはミラ様に任せていいかしら。私は麺を打つわ」
「はい。おまかせを!」
「クロムもスープをお願い。アク取りが終わったら、ザルで濾(こ)して細かいゴミをとって、別の鍋で煮込んで調味してほしいの。醤油と砂糖、塩は用意しておくから、薄いとかしょっぱいとかは少しずつ小皿で確認しながら、味を調整して。鶏肉は別に取っておいてくれたら、あとで私がオツマミにするわ」
「わかりました」


 さて、残る役割は麺作りだ。

 私とヨイが麺の担当。

「ヨイ様。麺を打ちます! うどんと似ていますが、多少材料が違います」

 調理台には強力粉と塩、水、そして重曹。
 この異世界において重曹とは、日本で売っている重曹と同じ。
 一般的には肉料理の肉を柔らかくする下ごしらえ、パンケーキをふくらませる膨らし粉、という使い道がある。

「重曹ですか」
「ええ。ラーメンの麺はこれを入れないと美味しくならないの。それと、水はうどんのときより少なめです」
「水分量も重要なのですね」
「地域によって多少違いますが、今回は40%です」

 多加水麺というジャンルになる。
 ヨイと力を合わせてこね回し、ガンガン打ち、滑らかになったら打ち粉をしながら麺棒で伸ばす。
 薄く伸ばしてたたむ。

「まあ。ここまで薄くするんですの? 本当にうどんと違いますのね」
「ええ。そしてうどんより細く切ります」

 麺用の包丁で切り分けて、ザルに上げる。

「そしてスープと具ができてから茹でます! 細いので茹で時間は短いです」
「ふふふ。どうなるのかワクワクしますわ」
「煮豚の用意もまだ時間がかかるし、みんながおかわりすると思うから、今のうちに多めに麺を打ちましょう」
「そうしましょう! 腕がなりますわ!」

 筋トレ大好きなヨイの魂に火がついた。

 張り切りすぎた結果、スープと煮豚、煮卵、ゆでとうもろこしを待つ間に二十人前くらいの麺ができた。

 まあみんな食べると思うし、オッケー!

 たっぷりのお湯を沸かして麺を茹でて、丼にイン!
 そこにすかさず熱々の鶏ガラ醤油スープを注ぐ。
 半分に切った煮卵、薄切りの煮豚、そしてコーン!
 刻み青ネギものっけとく!

「鶏ガラ醤油ラーメン完成!!!!」