悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。

「ロブソンに振られてそんなにショックなんですか、姉上。その格好は、なんというか、……奇抜、です」

「文明開化ですわ。日本に洋服が入ったときも奇妙、奇抜と言われていましたし。時代の変革とはそういうものです」

「…………ニホンというのがなにかわかりません。ですが、姉上が気に入っているのでしたら、俺はもう何も言いません」

 クロムはあいまいな笑みで引き下がった。
 
「ところで、なぜ今ダンスレッスンを。姉上はもう完璧に踊れるはずなのに」

「腕が鈍ったので一からやり直しています」

 というのは方便だ。

 実際のところ、鈍るどころか知識無し。

 日本の一般庶民だった私がワルツを踊る機会なんてあるはずもない。

 さっきから先生の足を何度も踏んで泣かせていて、申し訳ない。

 子爵家の名に泥を塗らないくらいにうまくならないと。

 中高で体育の成績は5段階評価の2だったから、私の運動神経についてお察しでしょう。

 体育の中で唯一得意なのは平均台を歩くこと。

 うん、ダンスレッスンがんばりましょ。