悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。

「な、何なの、その田舎くさい格好は」
「あ、ハンテンですか? マダム・ソアラにお願いして作ってもらいました。母上も一着いかがでしょう。とってもあたたかいですよ。ついでにおでんの味見もお願いします。今度のレシピ本に載せる予定なので」

 母上に手招きしてドレスの上から試作ハンテンを着せ、おでんを器によそってレンゲを添える。

「あら、本当にあたたかいわ。……このおでんというのも、ポトフみたいだけど味が全然違うわ。魚介の香りがして旨味が……。鶏のミートボールにもなにか入っているのね」
「さすが母上、味覚が鋭いですわ。臭み消しにすりおろしたジンジャーと胡椒、ネギを入れています。シメのうどんもぜひ食べてくださいませ」
「なるほど、スープに具材の味がしみ込んでいて、麺との相性がいいわ。ただ、このおでんに入れるにであれば細麺にしたほうがより合うのではないかしら」

 やっぱり母上レポーターに向いてるわー。
 ついでにお猪口にショチューを注いで渡す。

「ささ、これも一杯どうぞ」

 完全にこっちのペースに持ち込んで、お見合いを終えたクロムが様子を見に来たときには母上が出来上がっていた。

「何してるんですか、姉上だけでなく母上まで」
「あらクロム。お見合いは終わったの?」
「ええ。考え方がミゲル様によく似ておいででしたので、縁談は丁重にお断りしました」
 
 うん、養ってもらう気しかないヒモは無理だもんな。

「おつかれさま。一杯飲みなさいな」
「あははっ。そうよクロム、どーんと飲みなさーーい! 大根が美味しいからぁ! 飲め飲め! 無礼講ですわ!」