悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。


 私が気休めに言ってみるけれど、正体不明の声は今も聞こえている。

「幽霊でもきっと物理攻撃は効くのではないかしら。幽霊にわたしの領地で悪さをされたら大変よ」

 ヨイが部屋に置いてあったコート掛けをつかんだ。

「ヨイ様一人で行かせるわけにはいきません。わたくしも!」
「おれも」

 幽霊だと信じ込んだみんなが手に手に、枕やグラスを掴んでうなずく。

 ユージーン家の護衛も呼んで声のするほうに行ってみたら

「ああ、やっと気づいてくれたー。仕事が終わったから来たんだけど、この時間だから門は締まっているし門番もいなくて、砂浜で野宿するしかないと思ったよー」

 声の正体は、遊ぶ気満々のカインだった。
 早めにこれたら泳ぐつもりだったのか、海パンをはいている。
 ヘラヘラ笑う王子がみんなに頭を叩かれたのは言うまでもない。