悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。


「次はわたくしですわね。これは先週の話です」

 ミラがきりりと背筋を正して座りなおす。

「クローゼットにこっそり隠しておいたおやつのドライフルーツが消えていたんです! 寝る前につまもうと思っていましたのに!」

 あまりにもな内容で、コリンが声を上げて笑う。
 ミゲルが不自然にあさってのほうを向いた。

「そ、それは大変だね姉上。怖いなー。おばけもイチゴが好きなのかもしれないね」
「まあミゲル。なぜわたくしが隠しておいたのがイチゴだと知っているの? ……ミゲル、まさか」
「ごめんなさいいいいいっ!」

 犯人(ミゲル)が自爆した。
 家に帰ったら話し合いね。わかるわかる。
 蛇に睨まれた蛙ならぬ、ミラに睨まれたミゲル。
 ミラが怒っているところなんて、VSロブソン以外で見たことがなかったわ。

 コリンが大きく息を吸って話し始める。

「だめねえミゲル。こうなったら真打のあたしが怖い話をしようじゃない。あたしの話は……」

 話している間に、外から誰かの声が聞こえてきた。

「……い、おおおおい、誰かあああ!」

 男の声?
 みんなで顔を見合わせて、窓の外を見る。耳を澄ませると、声は海のほうから聞こえる。

「ま、まさかミゲル様がさっき話していた幽霊」

 作り話じゃないですかー、と笑っていたクロムが一番青ざめている。

「まっさかあ。あれはさっき思い付いた嘘のホラーだし」
「でもほら、何度も呼んでいるわ。ミゲル。もしかして本当のことなんじゃ」

 ミラまでもが信じ始めた。

「でもここってユージーン家のプライベートビーチだし、庶民が入りこんで勝手に泳ぐなんてことないでしょ」