悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。

「クリティア、何を作ってくれるの?」

 コリンが調理台に両肘をついて、鼻歌をうたう。私が知らない曲なのか、それとも音感とリズム感が壊滅的なのか、原曲がわからん。

「カスタードクリームのクレープを」

「あら、それはいいわね! うちのシェフに頼んでみたんだけど、ガレットに砂糖を入れるなんて正気ですか? って言われちゃって」

「私が料理を始めた時もそんなもんだったわよ。日本食とここでは食文化の常識が違いすぎて、みんな最初に見せたらびくついてたわ。タコをみてモンスター扱いだし」

「タコのカルパッチョ美味しいのにね。知らなかったなんて損してるー」

「コリン、逆転の発想よ。美味しいものを知る機会が、私達よりずっと多いのよ。ほら、それ食べなくても味知ってるーって思うよりも、「初めて食べた! 美味しい!」のほうが良くない?」

「それは、そうかも。日本って外国の料理店もなんでもあったもんね」

 さすが銀座に行く女子。思いつくタコ料理がめっちゃオシャレ。私はタコ焼きかタコの唐揚げだったのに。

 こうして日本の話をする相手はミゲルしかいなかったから、新鮮だな。