悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。

「おれもよくお忍びで市場に行くけど、庶民の日常を知るのにすごくいいよ。最近日照りが続いて野菜があんまりとれないとか、そういうの聞けるし。あと単純に屋台の飯立ち食いするのは気兼ねなくできていい。四六時中、お行儀お行儀って言われるの疲れるからさ」

 ミゲルもカインへのフォローのつもりなのか、あけすけに言う。
 さすが元庶民の日本人、いつもピシッとした格好で気を張っているのは疲れると言い切った。

 みんなの言葉を引き継いで、私ももう一度伝える。

「……というわけで、今この場では、身分関係なくみんなで楽しく食べていただきたいです。両陛下」
「ううむ、そうだな。この量は二人だけでは食べ切れない」
「そうですわね」

 陛下も妃殿下も、側近たちも。私たちの言葉に押されてそれぞれおにぎりやコロッケ、タコ唐揚げのピックを持つ。

 陛下が一口食べたのを皮切りに、他の人も一人また一人、屋台メシを口に運ぶ。

「ホクホクしてる。うまいな、これ!」
「これがおにぎりか。素朴でおいしいね」
「美味しい! あちちち、こんな歯ごたえのあるもの初めて食べたわ」