悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。

「どうぞ、陛下。コロッケです」
「わたくしのおにぎりも美味しくできましたわ」
「わたしもタコ唐揚げ、自身ありですわ!」

 多めに用意したので側近や護衛、侍女の皆さんにも振る舞う。

「あなたたちもどうぞ」

「そんな、わたしたち使用人が主である陛下たちと同じ場で食べるわけには」

「そういう偏見を払拭するためにこうしてあなたたちにも振る舞うのです」

 私はコロッケを手に力説する。

「美味しいものを食べるのに国境も身分の境界もありません。美味しいと言い合える、それでいいのです! カイン殿下が陛下たちにも城下の味を知ってほしいと言ったのはそういうことも含めてです」

 カインに目配せすると、カインも深く頷く。

「そうだよ、父上、母上。市場で食べ歩きする人たちは、上司とか部下とか、そういうのをなしにみんなで美味しいと言いあって、笑い合っているんだ。ぼくはそういうのがすごく好きだって気づいた。馬車で通り過ぎるだけじゃ、国民の生活のことなんて何もわからないんだよ」

 カインはミラの手からおにぎりを受け取って、大きな口をあけてほおばる。

「うん、いい塩加減。美味しいねぇ」
「それはようございました。わたくし、屋敷の調理場でも、何回も作って練習したんです。爺やも婆やも美味しいって泣いて喜んでくれて、それが嬉しかったです」

 ミラが笑い、ヨイもお皿にタコ唐揚げを並べて誇らしげだ。

「わたしも、タコを料理できると知ってからは、漁師たちと話すことが増えたんです。タコだけでなくもっと魚の料理を広めたら、観光客や港の働き手が増えるんじゃないかって。一緒に試作して、港のレストランのメニューにも取り入れて、今では名物料理です」 

 クロムも手伝いをやりきっていい汗をかいている。