初田ハートクリニックの法度

 経が終わったあと、僧が退席してすぐにまた友子がネルのもとにきた。

 次は出棺のため外に出なければならない。

 無理矢理ネルの腕を引いて立たせた。

「ネル、あなたもう高校生になったんだから、いいかげんに甘えるのはよしなさい。授業中に寝たのだって恥ずかしいのになんでよりによって葬儀の最中にーー」

「ご、ごめんな、さ」

 母に怒鳴られたネルは一瞬肩をはねさせ、崩れ落ちるようにその場にうつ伏せになった。

 まるで全ての糸が切れたマリオネットのように。

 ネル本人も、突っ伏す気なんてなかったのか驚いて目を丸くしている。

 さっき急に眠りに落ちたこと、そして急な脱力。

 いくつかの疾患の可能性が頭をよぎり、初田はすぐさまネルの肩を支えて抱き起こし、手首をとった。

 脈がやや早い。

「ネルさん。お母さんがまた(・・)と言ったね。君は普段からこんな風に突然倒れたり眠ったりするのかい?」

「うん。ちゅうさんの、ときから。しゅっせきにっすう、たりなくなりそう」

 さっきまでまともに受け答えできていたのに、舌っ足らずになっている。

 舌の筋肉にすら力が入らないらしい。

 初田が支えていないと自分で上体を保てないくらいだ。