初田ハートクリニックの法度

 初田はネルの肩を指でつつき、小声で話しかける。

「眠いなら隣の部屋を使ったらどうだい?」

「ええと、あなたは?」

 ゆっくりまばたきして、スローテンポなしゃべり方で聞いてくる。

「わたしは初田初斗。サチおばあちゃんのひ孫だ。君とははとこ(・・・)関係ってことになるのかな」

「はとこ?」

 高校生になるかならないかといった少女では、親等の遠近などわからないかもしれない。

「初斗にいさんは、帽子屋さん」

「ん?」

「はっと」

「ああ、確かに英語だとHAT。帽子だねぇ。それじゃあ君は眠りネズミかな」

「私、根津美ネル」

 大人たちは平也と似ている初田を遠巻きにしていたのに、ネルは気にした様子もなく会話をしてくれる。

 それがなんだか心地よかった。