初田ハートクリニックの法度

 曾祖母を弔いに来ただけなのに、殺人犯呼ばわりされるのは気持ちがいいものではない。

 そんな状況の中、少女は空いていた初田の隣に座り、読経が始まって五分と経たないうちに初田にもたれかかった。

「あの、お嬢さん。眠たいなら隣の部屋を使ったらどうですか」

 仏間の隣は現在、余った座布団やらなにやらが置かれている。

 初田が小声で声をかけるが目覚めない。

「ネル! またあなたは! 恥ずかしいまねをするんじゃないの!」

 少し前の座布団に座っていた女性が初田たちの方に来た。

 たしか初田の母の従妹、根津美(ねづみ)友子(ともこ)といったか。

 僧は一瞬こっちに気をとられたものの、すぐに経を再開した。

「いえ、かまいませんよ。若い子には退屈でしょうから」

 友子はいらだちを隠そうともせず、ネルの頬を叩く。
 数分でぱっちりと目を開いた。

「おはよう」

「おはようじゃないわよ。おばあちゃんに失礼だと思わないの?」

「おばあちゃん、さっき絵本を読んでくれていたよね」

「また変な夢でも見たの? ったく。最後まで起きていられないなら連れてこなければよかったわ」

 ネルは今さっきまで寝ていたのが嘘のようにシャンと座り直す。

 友子は深く溜息を吐いて元の席に戻った。