初田ハートクリニックの法度

 出会いはいつも突然。

 初田が三十になったばかりの七月。
 曾祖母サチの葬儀に出席したときのこと。

 僧が読経しているさなか、隣に座っていた少女が倒れかかってきた。

 紺のセーラー服に青いスカーフ。髪は肩につく長さ。

 しかし肩の左右で長さがばらばら。
 もしかしたら自分で切ったのかもしれない。

(珍しい子だな)

 兄の平也が父を殺害して現在逃亡中のため、父方の親戚とは絶縁状態。
 今回の葬儀は母方の親族だが、平也のことを知っている。

 普段から顔を合わせていた祖父母以外の親族はみな、初田のことを遠巻きに見ていた。

「まさかあれ、初音(はつね)んとこの嘉神平也か? なんで殺人犯が葬儀に」

「いんや、あれは双子の弟の方だってよ。でも同じふうに育てられたんなら、弟も何しでかすかわかんねぇよな」

「滅多なこと言うな、殺されたらかなわん」

 聞こえないとでも思っているのか、ちらちらと初田を見ながらささやきあっている。