初田ハートクリニックの法度

「なんでマグロはよくて猫を殺しちゃダメなんだ」

「動物愛護法ってものがあるからさ」

「でも牛や豚や鶏を食べるじゃん。動物愛護って言うなら、牛や豚も食べるために殺しちゃダメだろ。牛や豚は殺しても法律違反じゃないのに、猫はダメってわからない」

「そうだねえ。わたしにもそこの線引きはわからないよ。法律を決めた人間じゃないから」

 家畜と愛玩動物の線引きは本当に難しい。

「コウキくん。今日の朝食はなんだった?」

「トースト、スクランブルエッグと、ウインナー、サラダ、野菜ジュース、ヨーグルト」

 指折り数えて答えるコウキに、初田は腰掛けているソファの横にある大きな観葉植物を指す。

「ここにパキラがあるでしょ。見ての通り模造品でなく、ちゃんと生きた植物だ。ほら、触ってみて」

「確かに生の植物だけど、それがどうかした?」

「なんでサラダは食べるの? 植物も生きているって今わかったでしょう? 鶏の卵や肉のことには言及したのに、サラダにされた植物のことはなんとも思ってなかったでしょ」

 そんなことを言われると思っていなかったのか、コウキは唾を飲む。