初田ハートクリニックの法度

 コウキが兄のようになる前に止めることができてよかったと、初田は心の底から思う。

 初田が中学一年の冬、両親が離婚した。

 平也は父に、初田は母に引き取られたため、初田は嘉神姓から初田になった。

 以降一度も会う機会がないまま月日が流れた。

 研修医期間を終え、二十九になった年、平也が父を殺したのだ。

 間違いなく父かどうか遺体確認を求められたとき、母は恐怖のあまり失神した。

 医師の勉強で血を見るのにはなれているつもりだったが、それはあくまでも人間の形をして、生きているひとが相手だった。

 フィギュアのように十以上のパーツに分かたれたそれが父親だとわかったのは、頭がたしかに父の物だったからだ。

 連日ニュースで報道され、兄が外科医になっていたことを知った。

 生き別れても同じ道を選ぶ……やはり双子なのだと、嫌な気持ちになった。

 とはいえ平也の専攻は外科。

 初田は精神科。

 そこだけが唯一の違いだ。