初田ハートクリニックの法度

 問診票に年齢家族構成などプロフィールを書いてもらい、目を通しながら話をすすめる。

【中村コウキ】
 四月十九日生まれ 十六歳
 高校中退
 父母子の三人暮らし

 父 秀樹(ひでき) 商社Aの営業主任
 母 礼美(れいみ) 専業主婦

 記載された電話番号は家の固定電話。

 携帯電話はゲームアプリを入れられたら勉強に身が入らなくなるから禁止されているらしい。

「コウキくんには、なんでも話せる友達はいるかい」

「小学生の頃からずっと塾行ってたから、誰かと遊んだことなんてない。ゲームや漫画も買ってもらったことがない」

 勉強だけがお友達状態。
 だからだろうか。
 コウキは声音にあまり抑揚がない。

「塾以外は? 夏休みに家族でキャンプに行くとか、海水浴に行くとかしなかった」

「父さん、仕事で忙しいから。土日も商談や接待で家にいないから、顔を合わせるのほとんどない」

「今日一日、わたし以外の誰かと会話をしたかい」

「受付の人と、母さん。……あ、あと、電話に出たら、インターネット回線が安くなりますよ、って。その三人」

 病院受付の応対は会話らしい会話とは言えないし、セールス電話に出たのだって生きた会話と言い難い。