初田ハートクリニックの法度

 コウキは父親を殺しかけたのに、罪悪感や恐怖にかられる様子もない。

 それどころかもう一度クラブを振り上げ、視線は秀樹を追う。

 頭に当たればほぼ即死。

 秀樹は弾かれたように玄関扉に手をかける。

 その時、来客をつげるインターホンが鳴った。

 外の人物は二回鳴らし、のんびりした声で名乗る。

「こんばんは、初田です」

 初田。

 ウサギのマスクをかぶった変人医師だ。

 なぜ日曜日に来たのかは不明だが、この際誰でもいい、初田を盾にすれば逃げられるーー。

 初田の声を聞いた瞬間、コウキの表情がほんの少しだけ和らいだ。

 それも一瞬のことで、振り下ろされた二投目が玄関床を割る。

 靴を履くのももどかしく、秀樹は靴下のまま玄関扉を開けて飛び出した。

 もちろん目の前には初田がいる。

 初田は青ざめた秀樹と、ゴルフクラブを握りしめたコウキを見て事態を悟った。

 悟った上で、秀樹の腕を掴む。