初田ハートクリニックの法度

「何だその顔は。文句あるのか、オレの給料で食わせてもらっている分際で」

「あなたが働くことを認めなかったからでしょう」

「現にオレの給料だけで生活できているだろう。くだらない。話がそれだけなら、オレはもう行くぞ」

 玄関で靴を履くため屈むと、後ろから大きな物音が聞こえた。

「コウキ! だめ、やめなさい!」

 切羽詰まったような礼美の声。

 振り向くと、顔のすぐ横を何かが通りすぎた。

 ゴン、と重たい音がする。

 背後にいたのはコウキ。

 コウキが何かを振り下ろした。

 手には、さっきリビングに放り投げたゴルフクラブが握られている。

 コウキがゴルフクラブで自分を殴ろうとした事実を、秀樹は数秒おいて理解した。