初田ハートクリニックの法度

 秀樹が自宅に帰り着いたときには、夕方六時をまわっていた。

「帰ったぞ礼美。洗濯は終わったのか」

「は、はい!」

 リビングに入ると、礼美がスーツとシャツ、下着をトランクに詰めているところだった。見たところアイロンもされている。

 及第点だ。

 秀樹は口角をあげる。

 ゴルフバッグをリビングに置き、代わりにトランクを持つ。

「来週また持ってくるから洗濯やれよ」

「……そ、それだけ、ですか? コウキが作ってくれたタルトを捨てたことに関して、悪いとは思わないんですか」

「要らないものを捨てて何が悪い」

 礼美は絨毯に膝をついたまま、唇を噛みしめる。

(作るなら礼美が作ればいいものを。なぜコウキに作らせるのか理解できない)