初田ハートクリニックの法度

 洗濯が終わったスーツを家に取りに戻らなければならないが、コウキの顔を見たくない。

 笑顔で猟奇殺人鬼みたいなことをするコウキ。

 コウキが、この嘉神のように秀樹を殺すんじゃないかという恐怖にかられる。 

 震える手で財布を取り出し、うまく掴めなかった五〇円玉が床に落ちた。

(何を動揺しているんだ、あんなのハッタリだ。コウキがネズミを殺したのは反抗期というやつだ。中学の時クラスのバカどもが窓ガラスを割っていた、アレと同じようなものだ。放っておけば収まる。精神病院なんて大げさな話にしやがって礼美のバカが)

 なんとか自分を落ち着かせ、電話ボックス内に貼られた最寄りタクシー会社に電話をする。

 礼美がサボりさえしなければ帰る頃にはスーツの洗濯とアイロンかけが終わっているはずだ。

 クリーニングに出せば高くつくが、礼美がやるならタダ。

 専業主婦なんだからそれくらいやってもらわないと困る。