初田ハートクリニックの法度

 接待ゴルフが終わり、得意先のお偉いさんがポルシェに乗って帰っていく。

 秀樹はタクシーを呼ぼうとしたが、スマホのバッテリーが切れていた。

 仕方なく敷地内の公衆電話ボックスに入る。

 何年前に貼られたのか、【指名手配犯情報求む】の張り紙が朽ちかけた状態でかろうじてガラス面についている。

 老人の顔が並ぶ中、唯一若く端正な顔立ちの男が写っている。

 嘉神平也(かがみへいや)

 罪状・殺人 父を解体し死体を放置した容疑で追われているーー

 書かれた年齢から計算して、生きているなら三十八歳。

 解体、という単語でネズミを解体したコウキの顔を思い出し、吐き気をもよおした。

 次に狩るなら貴方でしょうね、とこともなげに口にした初田の言葉を思い出す。