コウキが綴る日記は、料理してみたことや散歩したこと、些細な発見一つ一つに心動かされている。
いい傾向だ。
サボり癖のある人や治療に乗り気でない人は、ノートが空白だらけになる。
勉強以外のことに触れる時間はコウキにとってプラスに働いているようだ。
診療をはじめてからこれまで対話した中で、今日のコウキは一番血色がいい顔をしている。
膝の上で両手の指を組んで、視線を斜め下に落としながら口を開く。
初田がウサギのマスクをしていて目が合わないというのを差し引いても、コウキは人の顔ーー目を見て話しをしない。
どこか自信なさげで安定しない。
「俺、初めてオムレツを作ったんだ。母さんに教えてもらいながらだけど。焼きすぎて焦げてるとこが多いし、味があるとことないとこでまばらだし、おいしくなかった」
「そうか。料理してどう思った?」
「もっとうまく作りたい。母さんはおいしいって言ったけど、なんであれを美味いなんて言えるんだろ」
「コウキくんが作ってくれたからさ」
まだ十六の少年に、親心の機微というのはわからないだろう。
初田の答えを聞いて、理解不能という顔をする。
いい傾向だ。
サボり癖のある人や治療に乗り気でない人は、ノートが空白だらけになる。
勉強以外のことに触れる時間はコウキにとってプラスに働いているようだ。
診療をはじめてからこれまで対話した中で、今日のコウキは一番血色がいい顔をしている。
膝の上で両手の指を組んで、視線を斜め下に落としながら口を開く。
初田がウサギのマスクをしていて目が合わないというのを差し引いても、コウキは人の顔ーー目を見て話しをしない。
どこか自信なさげで安定しない。
「俺、初めてオムレツを作ったんだ。母さんに教えてもらいながらだけど。焼きすぎて焦げてるとこが多いし、味があるとことないとこでまばらだし、おいしくなかった」
「そうか。料理してどう思った?」
「もっとうまく作りたい。母さんはおいしいって言ったけど、なんであれを美味いなんて言えるんだろ」
「コウキくんが作ってくれたからさ」
まだ十六の少年に、親心の機微というのはわからないだろう。
初田の答えを聞いて、理解不能という顔をする。


