初田ハートクリニックの法度

 精神医療を必要とする人の症状はピンキリ。

 コウキのように特殊なケースもいれば、ネルのような過眠症の人もいる。

 職場になじめず適応障害になる人も少なくない。

 大人になってから発達障害だと判明する人もいる。

 偏見を持つ人間を納得させるのは難しいものだと、秀樹と会話して改めて感じる。

 話を終えてクリニックに戻ると、心配そうな顔をしたネルが駆け寄ってくる。

「先生、大丈夫でしたか」

「ありがとう、根津美さん。警察を呼んでくれたんだね」

「いえ……」

 いつもなら昼寝をしている時間なのに、この騒動で眠れていない。

 足元がおぼつかなくなっていた。

 ネルの症状が悪化してしまわないかどうか、それだけが気がかりだ。

「今日の午後診療は三時に来る亀田さんが最初だから、それまでは寝ていなさい」

「そう、します」
 
 ネルはふらふらしながら仮眠室へと消えていった。