初田ハートクリニックの法度

「載っていないが、そんな変なものをかぶって生活するのは非常識だろう!」

「あなたの常識に従わせることができるのは家族だけですよ。わたしはわたしの思う常識の中で生きている。指図したければ政治家にでもなって、【ウサギマスクをつけて生活したら禁固五年罰金百万円】とでも法案をつくってください。いち日本人として、法律には従いますから」

 放たれる毒舌鉄球を、初田が爆竹にして打ち返す。

 秀樹があまりの剣幕で叫んでいるから、誰か(・・)に通報されたらしく、近くの交番からお巡りが二人来てしまった。

「初田先生。何事ですかな」

「見ての通り、怖い人に絡まれています」

「そうですか。すみませんが少し話をさせてもらお……」

 秀樹は分が悪いのを察し、足早に立ち去っていった。

 追おうとした巡査部長を引き留めて、初田は仲裁に入ってくれた礼を言う。

 この人の母親は初田の患者だ。不眠症の通院治療をしている。