初田ハートクリニックの法度

 離婚したところで親権を取れる可能性は五分五分。

 礼美が結婚後ずっと専業主婦だったこと、経済的に子どもを育てられないことを指摘されれば、親権と養育権が秀樹に渡る。

 初田に相談すれば、打開策をもらえるのではと考えて、思い直す。

 ただでさえコウキの治療で負担をかけているのに、治療と関係のない部分で迷惑はかけられない。 

 出口のない迷いの森の中にいるような……そんな気持ちになってくる。

 正解を示す羅針盤が狂って、延々と回り続けている。

 渦巻く負の感情をのみこんで、礼美は初田に提案された治療方針の説明を終えた。

「ーーということなの。これでコウキの心の負担が軽くなるなら……」

『許可しない』

 たった一言の短い答え。

 聞き間違うはずもないけれど、耳を疑った。