初田ハートクリニックの法度

 ーー貴女とコウキくんは人の顔色を気にしてばかりいる。

 初田に指摘されたことを思い出して、礼美は顔を手で覆い自嘲する。

 そう、礼美は子どもの頃からずっと、人の反応に怯えて生きてきた。

 両親が離婚したあと、母が礼美の親権をとった。

 母が礼美を引き取ったのは、愛ゆえではない。

 養育費が欲しかっただけ。

 父が礼美のために送ってくれた養育費は全額、母の煙草と酒になった。

 電気とガスがたびたび未払で止められ、風呂もまともに入れない。

 礼美はサイズが合わなくなったTシャツ二枚をローテーションで着るしかなく、いつも薄汚れていた。

 母の機嫌を損ねると、一日一食の食事すら抜かれた。

 だから礼美は常に母の機嫌をうかがうのに必死だった。

 古いアザが消える前に、新しいアザができる。

 母は服を着ていたらわからない位置にばかり攻撃してきた。