初田ハートクリニックの法度

 家に帰ってから、足が震えて棒のようになっていることに驚いた。
 
 徹夜で勉強をしたときのような、嫌な疲れではない。

「コウキ、たくさん歩いたから疲れたでしょう。はい、ホットココア」

 ダイニングの椅子に腰を落ち着けて、ココアに口をつける。

 秋物のコートにマフラーを巻いていても、体が冷えていた。

 暖房が効いてきて、部屋も徐々に暖かさを取り戻す。

「休憩したらお昼ごはんを作りましょうね」

 礼美は腕まくりしてどこか楽しそうだ。

 新聞を切り抜いたレシピがテーブルに置かれていて、カラーマーカーでいくつか線が引かれている。

 いつも何も考えず食べているだけだけれど、レシピを見ると手順が割と多い。

 コウキは面倒だと思ったが、礼美は毎日三食、こういうものを何品も作っている。

 秀樹が何かとうるさいから。

 また一つ、視界がクリアになったように感じる。