初田ハートクリニックの法度

 昔の言葉で言うならヤンキー、ワル。

 白兎はそういう上級生に脅されて、お金を巻き上げられていた。

 その後輩との出会いは引っ込み思案の自分を変えるきっかけになった。

 ネルの診察が終わり診察室の扉を開けると、布マスクをした初田が待合室の長椅子に腰掛けて、医学誌を読んでいた。

 ネルが出てきたのに気づいて顔を上げる。

「終わりましたか」

「うん。待っててくれてありがと、初斗にいさん」

 初田に診療ノートを返すと、初田は白兎に軽く会釈する。

「なにか不足はありましたか。先輩から見て気になる症状の変化があったら遠慮なく言ってください。家でも気にするようにするので」

 その様子は我が子を心配する親か、妹の身を案じる兄。

 最初、初田はナルコレプシーの研究をしたいという名目でネルを引き取った。

 血縁としてはかなり遠縁だし出会ってから一年も経っていないが、二人はただの同居人ではなく、かけがえのない家族になっていた。

「問題ないよ。初田君はワタシが考えるよりずっといいお兄さんをしているね。…………ときに初田君。自分を水棲の生き物で例えるとなんだと思う?」

 ほんの少しの好奇心で聞いてみると、初田は数秒考えてすぐに答えた。