初田ハートクリニックの法度

 放課後になり、平也はまっすぐ家に帰った。

 玄関扉を引くと、足元に積まれていた弁当惣菜の空きパックを詰めた袋が転がっている。

 兼業主婦だった母初音(はつね)がいなくなったうえに、家事を率先して手伝っていた初斗もいない。

 家事をしない男二人だけだから食事もスーパーや弁当屋の弁当ばかり。

 たまに嘉神の祖母が様子を見に来て掃除するけれど、毎日ではないからゴミがたまる一方だった。

 三和土(たたき)に靴を放り、自室に向かう。

 初斗と二人で使っていた八畳間だが、一人部屋になってだいぶ広くなった。

 感慨というものを持つ人間なら、寂しいとでも感じるのだろう。

 あいにく平也は一人でいることを寂しいと思うタイプではない。

 学ランと鞄を畳に投げ出し、敷き布団に寝転がった。