初田ハートクリニックの法度

 他にやることもないから授業は出席するし、教師に指されたら答える。

 教科書を読み教師の話を聞いていればほぼ満点を取れるのは当然だった。

 五月の終わり、昼休みに寝る場所を探して三階への階段を上っていると、数名の話し声が聞こえてきた。

 ひとけのない、屋上に続く階段の踊り場に集まっている。

 三つ編みおさげでメガネの女生徒が、五人ばかりに取り囲まれてなにか言われていた。

「ほら、さっさと財布出せよ。おれら腹減ってるからよ。奢ってくれよ」

「もう、出せるお金、ないです」

「全員に殴られるか、金出すか、お前に選べるのは二択だけだ」

 囲まれたお下げ女子は、震えて泣いている。

 それを見て笑い転げる五人。

 ドラマでしかないと思っていたような光景が繰り広げられていて、あまりの馬鹿さに平也は笑ってしまった。