初田ハートクリニックの法度

 リナはネルに湯たんぽを託したあと、駅に向かった。

 歩に出禁を言い渡されているため、店内に入ることはできなかった。

 十一月の風はずいぶんと冷たくて、体がすくみ上がる。

 ギプスがとれたけれど、傷があったところがまだ痛む。

 形成外科で傷痕を目立たなくする手術をする予定になっていた。

 腕、足、顔……全ての痕を消すには年単位かかるかもしれない。

「リナさん、待ってください」

 男性の声に呼ばれて振り返る。

 初田が歩み寄ってきて、頭を下げた。

 モデル顔負けの端正な顔立ちに微笑みを浮かべている。

 初めて会ったときは妙ちくりんなウサギマスクをかぶっていた。

 双子の兄が逃亡中の犯罪者だと聞かされたときには、驚きすぎて声が裏返った。

 テレビ局のコネを使って番組担当者に繋ぎ、あの特別枠が実現した。