初田ハートクリニックの法度

「ある程度この方法が馴染んできたら、同じように心が苦しい人と対話ーー集団トレーニングをする。悩みや困難に当たったとき、どんなふうに解決できたかの情報を共有したら、助け合えるだろう?」

「俺だけじゃない?」

「育つ環境がみんな違うから、全く同じ状態ではないけれど。それでも、分かち合う人がいるのは大切なことだよ」

 コウキと礼美に木の絵を描いてもらって判明したのは、二人とも孤独を抱えているということ。

 家族三人で暮らしていながら、コウキと礼美は理解者がいない、孤独だと感じていた。

 だから同じように心の治療をする仲間がいるというのはとても大きな支えになるはず。

「お母さん。中村さんと連絡が取れたら中村さんにもこの療法のことを説明してください。家族の理解と協力なくして、心の治療は成り立たない。話し合いにならなそうならわたしに電話なさい」

「……はい」

 礼美の顔は暗い。

 秀樹の理解と協力が得られそうにないのはわかっていても、それでも伝えなければならない。

 知らぬところで勝手に話を進めたら、腹の虫が収まらないのは目に見えていた。

 息子から逃げたことなんて棚上げにして、初田や礼美に怒るだろう。