初田ハートクリニックの法度

「それがいまでは最愛のお嫁さんです」

「のろけんな」

 思い出したようにのろける初田に、平也は毒を吐く。

「それではもうそろそろ帰ります。ネルさんを迎えに行かないと」

「帰れ帰れ」

「また来ますね。次は母さんも一緒に」

 平也が絶対にしないようなやわらかい笑みを浮かべ、初田は面会室を出て行く。

 初田が十年閉じこもって生活していたのと入れ替わるように、今度は平也が外に出ることのできない生活を送っている。

 鏡映しのような人生だ。

 外に出られないことがどれほど退屈で味気ないか、この一年で身をもって知った。

 死刑じゃなかっただけよかったと思え、と何度刑務官から言われたことか。