初田ハートクリニックの法度

 平也が檻の中に入って一年が過ぎようとしている。

 服役中の平也の元には、定期的に弟からの手紙が届く。

「手紙でのろけんなボケ」

 初田は決まって第一水曜日に面会をとりつける。

 アクリル板ごしに会うのはもう何度目だろうか。

 幼い頃から変わらず、のらりくらりと平也の毒舌を打ち返す。

「いいじゃないかのろけたって。兄さんはどうせぼくの話を聞いてやしないんだから、壁に話しているようなものだもの」

「俺は壁じゃねえ」

「ほら見て兄さん、可愛いでしょう。フォトウエディングだけしたんです」

 文句を言ってもどこ吹く風。

 初田が大切に胸ポケットに入れていた写真には、かつて平也と一度だけ対峙した女性、ネルが映っている。

 ツインシニヨンだった髪はひとまとめのアップにされて、長手袋のロングドレスを着ている。

 平也の好みではないが、一般的には愛嬌がある子に分類されるだろう。