初田ハートクリニックの法度

 お茶会が終わってから、初田はふとんに入る前に、ネルに聞いてみた。

「ネルさんは、子どもが欲しいですか」

「うん。いたら楽しいだろうなあ。にいさんの子ならいたずらっ子になって、すっごく手がかかりそうだけど」

 ナルコレプシーの薬の中には、胎児に影響を及ぼすものもある。

 妊娠中に服用し続けると奇形児が生まれる可能性があるという。

 可能性であって、絶対ではない。

 そこは薬の種類や量を調節することでなんとかなる。

 結論を言えば、母胎がナルコレプシーでも妊娠出産は可能。

 ネルが望むのなら、その未来を選んでみようと初田は思った。

 無味乾燥なクリニックがネルによって彩られているように、ふたりの未来もまた、子どもが生まれたら新しい色で彩られる。

 いつかの未来を想像して、初田はネルを腕の中におさめる。ネルも初田の背に手を伸ばす。

「そうですね。三人家族になるのも、とっても楽しそうです」