初田ハートクリニックの法度

 ネルの誕生日に提出して、今日のお茶会をむかえた。

 平也のこともあったから、披露宴や結婚式といったものはしていない。

「初斗ったら親の私にも教えてくれないのよ。まったくもう」

「ネルも秘密って言って教えてくれないし」

 初音と友子も、内緒にされてブーブー言う。

 我が子の恋愛事情が気になって仕方ないらしいが、初田としては聞かれたくない。

 ネルに押し切られるような形で気持ちを自覚させられた、なんて恥ずかしくて言えなかった。

 とうのネルも「秘密ー」と言いながら初田の隣でアールグレイを飲む。
 
「あたし恋人なんてできたためしないけどさ、ネルを見ていたら支え合える人がいるのってなんかいいなって思うんだよね」

 アリスにつつかれて、ネルは照れ笑いする。

 首からさげた時計の鍵を両手で大切そうに包んで、初田の肩によりかかる。

 初田もさりげなくネルによりかかる。くっついたところがあたたかくて、くすぐったいような気持ちになる。

 とくに求婚の言葉なんてなくても、自然とそばにいることを選んだのだろうとみんなそれで察した。