初田ハートクリニックの法度

「初田君こそ、調子はどうだい。数日前の診察で、ネルさんにナルコレプシーでも妊娠出産は可能ですか、なんて聞かれたんだが。もう籍は入れたんだろう。いいじゃないか新婚さん。ワタシが言ったとおりになったじゃないか」

「くそめんどうくさいですよ先輩」

「何を言うか。ワタシを呼んだのは君たちじゃないか。不思議の国のお茶会なら、シロウサギは不可欠だろう。プロポーズの言葉はなんだったのかな。一生結婚できない気がすると言っていた君が結婚するなんて総合病院のみんなに話したら酒が進みそうだ」

「そういう俗な話は嫌いです」

 逃げようとする初田を、歩が羽交い締めにした。

「酒の(さかな)にされるのは(しゃく)でしょうけど、アタシは聞く権利あるわよね。証人欄にサインしたのはアタシよ」

「その論でいくなら、あたしも聞いていいってことかな」

 アリスがひょっこり顔を出す。

 ふたりが言うように、婚姻届の証人サインをしてくれたのは歩とアリスだ。

 証人をお願いしに行ったとき驚かれはしたものの、祝福してくれた。