初田ハートクリニックの法度

 待ちに待ったお茶会当日。

 気持ちのいい秋晴れで、川沿いに植えられた木々が見事に紅く色づいていた。

 歩がキャンプ用折り畳みテーブルを持ってきてくれた。

 それを四つくっつけて、大きなテーブルをつくる。

 そこに所狭しとお茶やおにぎり、それぞれが持ち寄った茶菓子が並ぶ。

「これは秋?」

「そうね。これは秋よ、コウキ」

 コウキが降り注ぐ木の葉を掴まえようと、走り出す。

 礼美ははしゃぐ息子を見て嬉しそうだ。

「もっと紅茶をどうぞ」

「いただくわ」

 初田に紅茶を勧められて口をつける。

 仕事は順調なようで、診察の時よく話してくれる。

「コウキくんは志望校が決まったんですよね。どうです、家での様子は」

「あら、お茶会なのに診察みたいですね」

「これは失礼。職業病です」

 礼美に言われて初田は口にチャックをする。

 九年も精神科医をやっていると、どうしても健康状態を質問してしまう。

 それを見ていて、肩をふるわせたのは白兎だ。

 もう酔っ払っているのか、片手にはブランデーの空き瓶を握っていた。