初田ハートクリニックの法度

「もうすぐ職業訓練校の修了でしたよね。首尾はどうですか」

「おかげさまで、ワードとエクセルどちらも三級合格しました。犬井さんが勧めてくれた保育園の仕事に決まりました。清掃や遊具の手入れなんかの雑務と事務で……」

「それはまた、虎門さんにぴったりのお仕事ですね。こどもたちの人気者になるのが目に見えるようです」

「そう、ですかね」

 訓練校で同じような障碍をもつ人と友だちになったようで、その人とも頻繁に話をしているという。

 心に余裕ができて友だちに影響されたのもあってか、服装は若者向けのカジュアルなものに変化している。

 白シャツにおしゃれな銀フレームのメガネは、友だちが勧めてくれたのだそうだ。

 髪も短く切っていて、爽やかな好青年といった印象だ。

 来たばかりの頃はうつむいて自信なさげだったが、最近では笑顔が増えた。

「笑う門には福来たるっていうでしょう。そうやって笑っていれば大丈夫ですよ」

「はい」

 虎門は満面の笑みでうなずく。

 軽いノックのあとにネルが入ってくる。

「今日はセイロンちゃんですよ。歩さんがお土産でくれた台湾のおせんべいもあります」

 歩はアリスに店を任せ、二週間ほど台湾に行っていた。数日前に戻ってきたばかりだ。

 その際お土産にと、牛舌餅(ニョースーピン)なる煎餅をくれた。

 ほのかに甘くて、かりんとうのような味がするこの煎餅を、初田はかなり気に入った。

 歩にお願いしたから、ワンダーウォーカーの定番商品になりそうだ。