初田ハートクリニックの法度

「コウキくん。今日から日記をつけてみよう。ほら、日記帳をあげるから」

 初田はまず、弁証法的行動療法(べんしょうほうてきこうどうりょうほう)の個人療法を行うと決めた。

 もともとは境界性パーソナリティ障害の治療に向いている治療法だが、今のコウキになら効果があるはずだ。

 心の治療と体の治療、二つを同時に行う。

 コウキはあまり表情を変えず、抑揚のない声で聞いてくる。

「これに、なんの意味が」

「それが治療になるからだよ。コウキくんは自分が何に怒って、何を悲しいと思っているのか、何が嬉しいのか、何に絶望するのか知っていく必要がある。そうして、心から楽しいと思えることを見つけていこう」

 この先も小動物を殺して遊ぶ性質が残ってしまったら、社会生活を送ることが難しくなる。

 攻撃衝動を抑え込み、自分で自分の感情をコントロールできるようにならないといけない。

「何を書いても怒らないから、好きなように書いてほしい。腹が立ったとか、嫌だったとか、ご飯が美味しかったとか、些細なことも全部」

「ほんとうに、何を書いてもいい?」

「いいとも」

 初田の答えに、コウキの顔色が明るくなった。