初田ハートクリニックの法度

『兄さん、きっとどこかでこれを見ているでしょう。兄さんはかつてわたしに言いました。善人ぶるのが許せない、死んで欲しいくらいむかつくって。そのままお返しします。自分は何も悪くないという顔をしてのうのうと生活をしている兄さんが大嫌いだし、本当にむかつく』




 手の届く位置にビジョンがあったなら、叩き割っていた。

(早く部屋に帰らないと……いや、あいつらもこれ(・・)を見ているなら、俺を警察に突き出すか)

 怪我の治療をしてやった礼に、古いアパートの一室を使わせてもらっていた。

 さすがに、殺人犯の逃亡を手助けしていたなんて言われたくはないだろう。

 もう現在の隠れ家に戻れないと考えた方がいい。

 番組は次の事件の特集に移る。

 集団振り込め詐欺の犯人を捜索するという。

「ねえあれ、今テレビで言ってた人じゃない? 番組に送ってみよっかな。Rinaも協力してって呼びかけてたし。さっきテレビに出ていた弟さんって、Rinaが事故に()ったとき助けてくれた恩人なんだってさ」

 スマホのシャッター音がした。

 女子高生の言葉が聞こえていたのか、何人かが振り返る。