初田ハートクリニックの法度

 紅茶のおかわりを飲みながら、初音は感慨深そうに息をつく。

「ネルちゃんが娘になるなんて嬉しいわねえ。今度からは初音さんじゃなくてお母さん、って呼んでもらわないと」

「お母さんだと、二人が一緒の時どっちに言っているか分からなくなると思うの……」

 ネルは友子のことをお母さんと呼んでいるから、同じ呼び方では混乱する。

「じゃあ初音母さんなんてどう。ね、初音ちゃん」

「友子ちゃんナイスアイデア」

 年の差がありすぎるだとか平也のことがあるだとか、そういう反対意見は一切出てこず、いっそ「いつ付き合うのかと思っていた」とすら言われるしまつ。

 楽しげな母二人を見て、初田は安堵した。

「今回話したいのはこのことだけじゃなくて、兄さんのこともあるんだ」

「平也のこと?」

 初田はタブレットにとあるテレビ番組の特集記事を表示させる。

 逃亡犯を追う、指名手配犯捜査番組だ。

 未解決のまま二十年経過しているものや犯人が逮捕されていないもの、いろんな事件の記事が載っている。