初田ハートクリニックの法度

 クリニックの休診日である水曜日、初田はふたりの母を招いてお茶会を開いた。

 初音と友子は呼ばれた理由を察して「やっとなのね」と口を揃えた。

 ネルが初田によりかかって座り、手を繋いでいる。

 視線を交わして微笑み合う姿は、仲睦まじい夫婦のよう。

 何かあったと思わないほうがおかしい。

 初音が音を立てないようにティースプーンで紅茶を混ぜながら、息子の顔を見る。

 初田初斗は常に笑顔を浮かべている人間だが、その笑顔はうさんくさいものが多かった。

 これほどまでに穏やかに笑う姿を、母ですら見たことがなかった。