初田ハートクリニックの法度

「前回、ナナさんから聞きました。ナナさんが苦手なパソコン必須の手続きなんかを兄貴がしてくれてすごく助かるって。パソコンの訓練を受けて仕事に就くのは、虎門さんに合っているように思いますよ」

「ナナがそんなことを? いや、でもおれ、ちょっとかじった程度だからあんま自慢出来るようなもんじゃないですよ」

 ナナはパソコンが苦手だからすごいことをしているように見えるだけで、今の虎門は本当にちょっとしたことしかできない。

「基礎知識があればゼロをイチにするより楽ですよ。それに小さい子の相手が得意なようにお見受けするので、子供向けパソコン教室なんてのも良さそうです」

 褒められるなんて思っていなかったから、照れくさかった。

 虎門は次の診察予約を入れてクリニックを後にした。

 障害を抱えていることがわかった時にはこの世の終わりみたいな気がしていたけれど、障害があってもうまく生きていけるよう、サポートしてくれる人たちがいる。
 
 次に来るときは訓練校に通っている最中になる。

 検定級を取ったり、卒業したり、ここに来て初田とネルに報告する。

 そしてきっと二人はそのたびにお祝いの言葉を口にしてくれる。

 いい報告ができるようにがんばろう、そう思って虎門は電車に乗り込んだ。