初田ハートクリニックの法度

「できました」

 と、コウキと同じタイミングで礼美も描き上げた。

 傾斜のある地面、右に傾いた木が三本風に吹かれている。

 葉が一枚もない木のうろにリスの親子がいて、どんぐりを抱えて身を寄せ合っている。

 石や落ち葉が転がる寂しい風景の中、そこだけがとてもあたたかい。 

 じっと絵を眺め、初田は二人に確認を取る。

「この絵、もらってもいいかな」

「別にいいけど、もらってどうするのさ先生」

「絵を集めるのが趣味なんだ。根津美さんにも描いてもらったんだよ、ほら」

 紙の真ん中に、堂々と根を張った大木が鎮座している。

 広葉樹とわかるうねうねした葉のかたまりの線が引かれ、いくつもの木の実が枝からぶら下がる。

 左上から注ぐ太陽の光を浴びて、元気いっぱいに育っていた。
 
 それを見て礼美は感嘆の息を吐く。

「あの子そのものみたいな、明るくて元気を分けてもらえそうな絵ですね」

「ふふふ。お母さんはなかなか才能がありますね」

 礼美がネルと対面したのは、コウキの初診日の一回きり。

 絵から人柄を想起するのはなかなかのものだ。

「なぜこの絵を見てそう思われたのですか?」

「なぜかしら。わからないわ」

「直感は科学で測れないですからね」

 雑談を交えながら、いったん礼美には離席してもらい、コウキと一対一で話をする。