初田ハートクリニックの法度

 初田はネルが自分に対して恋愛感情を抱いていることを理解した。

 兄や父に対するようなものではなく、異性としての感情がある。

 他の女性であったなら、「わたしの妻になると殺人犯の義兄を持つことになりますよ」と制止できるのに。

 ネルはもとより初田と平也のはとこ(・・・)

 初田を選ぼうが選ぶまいが、平也と血のつながりがある。

「だめです。ネルさんは、幸せにならないといけない。わたしではない誰かの手を取って……」

「好きでない誰かと家族になるのは相手にも失礼だし、そんなの、幸せじゃない」

 ネルの肩を支えていた初田の手に、ネルの手が重なる。

「私の幸せは、にいさんの夢を一緒に叶えること。ずっと一緒に、お茶会をするの」

 もうとっくにネルの気持ちは固まっていた。

 いっときの迷いや、幼い憧れではなく、揺るぎない気持ちだ。