初田ハートクリニックの法度

 クリニックに帰り着く頃には、時刻が二十三時を回っていた。

 玄関の外照明がついている。

 鍵を開けて入ると、玄関にあがってすぐのところで、ネルがタオルケットにくるまって座っていた。



「にいさん! 無事でよかった……」

 ネルは立ちあがろうとして突っ伏した。

 情動脱力発作。

 ここ数年はほぼ起こらなくなっていたのに。

 かなり心配をさせていたことがそれだけでわかる。

「すみませんでした、ネルさん。あんなに、止められていたのに」

 危険だから行ってほしくない、行くならついていく、ネルは何度も言っていた。

 平也を見つけて警察に突き出せば平穏に暮らせる。

 そう思って焦るあまり、一番やってはいけないことをした。