初田ハートクリニックの法度

 カウンターに二人分の代金を置き、初田は店を後にする。

 扉を開けたところで、見慣れた人物がぶつかった。

「イタタタ、いきなり出てこないでよ初斗」

「歩!? どうしてここに」

 いつもと違ってカジュアルな服装だが、間違いなく歩だ。

「ネルちゃんに頼まれたの。あんたが危ない橋を渡ろうとしているから見ていて欲しいって」

「……ついてくるのを諦めたと思ったら、そんなことを頼んでいたんですか」

 初田は歩に引きずられるようにして、来た道を引き返す。

「あのねえ初斗。兄貴を探したい気持ちは痛いほどわかるんだけどね、こんなことして、あなたに何かあったらネルちゃんはどうなるのよ! ネルちゃんの人生を預かっている身で、何してんの。バカなの!? それに、アリスちゃんだってまだ治療が終わってないのよ!?」

 歩が叫び、拳で初田の左胸を叩いた。

 叩かれたところが熱くて痛い。

 初田はネルを引き取る時に約束した。

 この先治療に何年かかるとしても、初田が治療費を持つし、責任を取ると。

 初田に何かあると、ネルが誰よりも迷惑を被る。

 そして大怪我でも負わされようものなら、クリニックにくる患者にも迷惑がかかる。